初出:山陰中央新報いわみ談話室

最近、すっかり季節感がなくなり、花たちは咲いていいのか悪いのか悩んでいるみたいで気の毒だった。でも、いくら何でも今は春真っ盛りだよねと庭の花たちが一斉に咲いたので安心した。

今、パソコンの猛練習中で、近々ホームページまで作ろうというのだから人間は、何がきっかけで変わるか判らない。昔、通知表に、佐々木君はおっとりしていて余りにも競争心がないので、人生のバスに乗り遅れるのではないかと心配だ、と書いてあった。確かに確かに乗り遅れました、背の君の一人も見つけられず、この歳でまだ母からガミガミ叱られる可愛そうな私、こうなったらパソコンなどという感性をすり減らすような便利グッズなどには目もくれず、徹底して遅れて生きてやろうと思っていた。ところが、この仕事を続ける場合、それを持っていた方がやっぱりいいみたいだと感じる場面が多くなって、素直に諦め、遅ればせながら買ってしまった。
数日後、母が、私もメールをしてみたいな、と言うので手始めに母用の携帯電話を買った。親子間のメールはタダだから何が何でも覚えてよね、と言って毎朝練習。でも、なかなか出来ないので、ついつい腹が立って怒ってしまう。ある朝、やっと母からのスカイメールが無事に届き、ヤッタ、ヤッタ、長い道のりだったねえと喜びながらメールを読むと、そこには「めぐみにしかられまあした」という言葉が!
来る日も来る日も、めぐみにしかられまあしたと打っていたのかと笑い転げた。新しいことに向き合うのもたまにはいいかなと思った。母も私も悪戦苦闘しているわりには何だか気合いが入っているから。
ヤマボウシの花が一輪、父の病室にいけてある。庭に咲いた花を一輪づつ母が持って行く日々は変わらない。でも、どこか今までと違う母のようだ。
深夜のアトリエ。昔からお世話になっている画材店の店主から、これは最高の筆だから使ってみて、とプレゼントしていただいた毛先の細い筆が傍にある。初トライしてみる粉の岩彩も、触り心地が紙とあまり区別がつかないキャンパスも傍にある。絵のスタイルは変わらなくても初めての画材を試す時の楽しい気分は、テーブルに置いてあるケーキの存在を忘れるほどである。
めまぐるしく変わる現在。なかなかついて行けなくて困るけれど、ほんの指先だけでも時代に引っ掛かってくれたかしらと、アトリエに加わった新顔のパソコンを眺めている。
2005.5.31