初出:山陰中央新報いわみ談話室

 私は今、地元の小学校への記念作品を描いている。校長先生から『夢いっぱいの佐々木さんの絵を、ぜひ子どもたちに残してあげたい』と言われ、嬉しくて心弾ませて取材に出かけた。 丘の上に立つその小学校へ着くと、子どもたちが元気な挨拶で迎えてくれた。私はすごく照れて、大人のくせに身の置きどころに困った。

校長先生が『ここの子どもたちは校庭でよく遊ぶし何しろ子どもらしいんですよ』とおっしゃった。続いて教頭先生が、周りの景色を見ながら『環境のせいですかね』と。
振り向くと、いつもの風景が何故か特別新鮮に目に飛び込んできた。手前に広い校庭。いろいろな木々や花に囲まれた校舎。その向こうに石見瓦の家並みが広がり、手が届きそうな距離に日本海が見える。

いい眺め…。

しばらく見ていたらゆかいな物語が思い浮かんだ。『しめしめ、物語が思い浮かんだら、後は描くだけよ』と思いながら、忘れないようにとその日のうちにラフスケッチを描いておいた。描きながら私も同じ風景を見て育ったことを思い、少しの間思い出の中にいた。
所沢市に長年の友がいる。一緒に食事に行った時、彼女は真剣なまなざしでメニューとにらめっこしていた。考えること五分。気が短い人なら『早く決めたら?』と言うくらいの時間だ。でも、私も負けず劣らず、メニューとにらめっこしていたのだった。
その後、彼女と私のおしゃべりの真ん中には必ず食べ物が置いてあり、その趣味し好は不思議なくらい一致した。
悲しいときも落ち込んだときも、声がかれるほどのおしゃべりと、共通の好きな食べ物を食べて乗り越えてきたように思う。そして最近になって彼女が育ったところが千葉県の海沿いの町で、石見地方と何から何までそっくりだと分かり、それはもう驚いた。
そこで『環境ですかね』という教頭先生の言葉が思い出され、思わず『性格形成における自然環境の影響について』の論文でも発表しようかと思ってしまった。
私の周辺を見ると、豊かな自然を背景に感じの良い美術館が建ち、音楽ホールがあり、『本日水揚げ』の新鮮な魚が食べられて、やはりここは良いところだと思う。
そして、学校からの帰り道、楽しそうにおしゃべりしながら歩いている子どもたちの姿が、何よりもいいなあと思う。
ところで早朝六時、仕事を終えて窓の外を見たら、
イノシシ君が家の柿を食べていた。私と目が合ったけれど、かまわずに食べていた。朝日の中のおっとりイノシシ君。ここの環境はなかなか刺激的かもしれない。