初出:山陰中央新報いわみ談話室

母と私の生活には時差があり、ゆっくりと一緒にいられるのは夕食の時と、その後の数時間しかない。今だ!とばかりに母が一日の出来事を一気に話すのを聞くのが私の日課のようなもの。つい、「もっと短くまとめて言ってくれん?」と憎まれ口を叩いてしまうのだけれど、その日の母の「今日はねえ〜」はとても有難いものだった。

花畑のその花はファイヤーウィードという名前。そこに大きなホッキョクグマが座り、花の香りを楽しんでいるかのような表情を見せた。うふふと笑っているようにも見えた。なんて気持良さそう!そのうち、ホッキョクグマは、空に向かってまっすぐに顔をあげて目をとじた。花畑のローズピンク色とホッキョクグマの白色との見事なコントラスト。あったか〜い美しさに思わず涙が溢れた。ああ、生きている。みんな生きている。動物が花の香りを楽しんでいるという映像は、衝撃だった。「感動する」という感情が人間にだけ当てはまるものと知らないうちに思い込んでいたのかもしれない。
「うわあ、見た?今の映像きれいだったね、お母さん」と言って振り向くと、母はすやすやと寝ていた。全く、何でこんな時に寝るのよぉ?と残念に思ったけれど、母のその寝顔もまた幸せそうで思わず笑った

畑の桜が、今年もきれいに咲きそう。そこに小鳥が来るけれど、食料調達だけが目的ではなくて、花の香りが嬉しくて、小鳥ダンスをしているのかもしれない。

小鳥はどういうわけだか雨が降る早朝に忙しそうに飛びまわる。どうして?「朝早くから頑張りますねえ」と話しかけてみた。「いいえ、別に頑張っちゃあいませんよ。雨が降ると都合のいいことがあるのでござんチュよ。」と答えた気がした。それにしても小鳥から見れば、私たち人間はどんな風に見えるのかなあ?