(山陰中央新報いわみ談話室初出 2012・3・8)

今年の冬は長く感じた。寝坊のはるかぜさんがやっと目を覚ましてくれたのか、
ここ数日の暖かさで庭の花が一気にふくらんだ。

六月頃には、月刊保育絵本に日本の昔ばなしの絵を描くことになっている。
日本の昔ばなしを描くのは出版社からの仕事としては久しぶりのこと。
原稿を読んでみると、お腹を抱えて笑うほど楽しいお話だ。
担当の方に「まんが日本昔ばなしを思い出しますよね」と言うと
「あの番組、良かったですよねえ。市原悦子さんと常田富士男さんの読み語り。
日本の昔話をさらに発掘して出版したいのですが、
最近はテレビで人気のキャラクター本でないと売れなくて、本当に残念です」
とおっしゃっていた。

「まんが日本昔ばなし」は土曜日の夜、七時からの放送だった。
放送が始まった頃、私は子どもではなかったけれど、
土曜日の夜は楽しみで子どものようにソワソワした。
どうしてあんなにいい番組がなくなってしまったのか…。
せめてBS放送で再放送してくれたらいいのになと思う。

土地に根づいている民話は描いてみると本当に面白い。
「人麻呂とよさみ姫」「ハワイの民話・童話」「さくらえのみんわ」の3冊を描いたけれど、
描き進むうちにその土地の匂いが漂ってくる。

例えば、ハワイの童話はお月さまのおはなしが多く、
色とりどりの南国の花を描く場面が少なかった。何故?と尋ねたら、
ハワイで見る月は格別に美しいものだから自然にお月さまを神さまとして見るようになったのでしょう、
ということだった。自然への畏敬の念や感謝の気持ち。それがハワイの文化そのものだとわかった。



「人麻呂とよさみ姫」も「さくらえのみんわ」も、資料を読むと石見人の人柄や土地の歴史が、
するするっと心に入ってくる。何よりも、そのおはなしを語り継いできた先人の子どもを思う心が
そこにはいっぱい詰まっている。
先日、読み聞かせの会の代表の方から、「『人麻呂とよさみ姫』の絵本と、
桜江の民話の『火たきスズメ』とが大好きなもので、
読み聞かせに使わせてもらっていいですか?」と問い合わせがあり、
「もちろん喜んで!」とお返事した。民話を地元の子どもたちの
耳元で伝えていただけるのは何よりも嬉しいから。
私はラジオで朗読をする人になりたかった。
友人と一緒に放送局の就職試験を受けた事もある。
あっちもいいな、こっちもいいなといういくつかの夢はあっさりと破れた。
だけど絵を描く唯一の特技のお陰で、若かりし頃の夢のかけらがこうしてそばにある。
私はやはり夜中に独り、絵を描いているのが性に合っている。
大人から子どもへ伝える大切なこと。
その語り継ぎに絵で役立っていられることが、今、とても嬉しい。