初出:山陰中央新報いわみ談話室

 「あっ、これ面白いな」と思うと、一時のぼせる癖がある私。
最近は「山田洋次が選ぶ日本映画百選」という番組が始まり、昔の日本映画を立て続けに観ている。

「浮雲」や「名も無く貧しく美しく」などは、どうしてそこまで徹底的に悲しく描くのかと思い、後味が悪いとさえ思ったけれど、ゆっくりと深く展開していくので、ストーリーが心に迫り、いつの間にか食い入るように観てしまった。
それで、映画を観る時は部屋を暗くして集中したいのだけれど、昔の日本映画に限り、母も一緒に観ている…。「わっ、森雅之が出とるではないの」「お母さん大好きだったんよ、森雅之。すごく知的でね」とか、「その頃は車なんて無いし、お父さんとバイクに乗って映画を観に行ったもんよ」とか、母の昔話を聞きながらの映画鑑賞となり、少々…じゃなくてかなりうるさい。でも父と田舎のひどいデコボコ道をバイクに二人乗りをして映画を見に行く光景は、まるで映画の一シーンみたいではないの、と母の顔をチラチラと見てニタニタした。

父は、戦時中の話を一切しなかった。父は学徒動員で海軍の特攻隊にいたそうだ。終戦がわずかでも遅れていれば、父のその日が来て、当然私も生まれていなかったということを私は母から聞いていた。
私は両親から愛され、幸せに育ったけれど、両親の苦労を見てこなかったわけではない。だけど、昔の日本映画に描かれている「辛さ、哀しみを受け入れて、そして立ち上がり、明日へと向かう」といったほのかな希望と熱が、二人でお店を始めた当時の両親にもきっとあったはずだと思う。セピア色の写真に写る夫婦の笑顔が輝いて見えたから。

大震災と原発事故以来、スカっと心が晴れる日は無い。でもいろんな苦労を乗り越えて来た世代の穏やかで柔らかい笑顔を見ると、自然に「大丈夫」と思えて勇気が湧いてくる。笑顔っていいな。

ご飯だけ食べにくる猫のモモちゃんが赤ちゃんを産んだ。山の中は狐や狸がいて、無事に子育てするのは至難の業みたいだ。「なるほど、ここなら安全だねえ」と感心するような子猫の隠し場所をモモちゃんは見つけていた。私以外には絶対に見つからないであろうモモちゃんの秘密基地。甘えん坊だったモモちゃんがいつのまにか子育て上手のお母さんになっちゃって。みんな生きていくんだよね。頑張れ、モモちゃんも。