一ヶ月半にわたり今井美術館で開催された童画展が終了した。始まった頃は汗ばむ日もあったけれど、最終日には枯れ葉が舞い、冷えた風に吹かれながら車に乗った。江川沿いの景色は季節の変化がよくわかるから通う道が楽しい。閉館後の、今井館長さんと月森さんとの「お疲れさまティータイム」も楽しかった。個展終了の翌日、うちのイチョウの木もいつのまにか黄色の絨毯に埋まっていることに気づいた。「あなた、私を忘れていたでしょ?」とイチョウがしゃべった気がした。

賑やかだった。桜江中学校、桜江小学校、そして高角小学校の生徒たちに絵を見てもらいながら地元に伝わる民話について話せたし、津宮小学校と江津中学校へは講演に行った。一気に大勢の生徒、児童たちと交流し、短期間限定の教師体験をしたような気持ちだった。「絵をかわいく描くためにはどう描いたらいいですか?」その質問、答えに困った(笑)。

個展という場は特に人の温かさが心に沁みる場でもある。一人では何も出来ないと改めて感じるのだ。遠方からのお客様や何度も足を運んでくださる方、そして知人友人と話し、しまいには感謝の気持ちが抱えきれないほどいっぱいになり、胸が苦しくもなった。

そうそう、もう一人感謝しなければいけない人がいた。うちの母だ。
「明日は何時に起こせばいいかいね?」と、私をサポートしてくれた母を
うっかり忘れるところだった!

絶対に今風邪を引いたりしないでよね、と脅迫にも似た緊張を強いられる八十五歳も珍しいだろう。
以前、中央新報の「明窓」に女優の沢村貞子さんの失敗談が書いてあった。弟夫婦との同居が決まった高齢の母親に、台所には立たないよう言い聞かせたら、それが裏目に出て、料理上手で気丈な母親がそのうちに元気をなくした、という話。母が私に言った。「今日の明窓、読んだ?おばあさんになっても主婦をした方がいいんだと。」いいこと書いてあるなあと私は都合よく思ったけれど、実際母は、よく協力してくれました。ありがとう、母さん。

今井美術館の二階、中央の机の上に感想ノートを置いておいた。絵付きの感想がびっしり。子供たちが描いたカッパやスズメがギュッと抱きしめたいほどかわいい。学校からは児童、生徒からの感想文。
それを大事に持ち帰った。

童画展の期間中、母は仏壇の前で、「お父さん、いい童画展になりますようにね」と拝んでいたそうだ。「本当は感謝の気持ちだけ言ってお願いごとをしてはいけんのよ。でも、とうとうお願いごとをするようになってしもうた」と言う。

持ち帰った感想ノートを母と一緒に読んだ。

「宝物だねえ…。」

少し休憩したら、その宝物を少しずつ心のポッケから取り出して描いていこうと思う。
(挿絵は子供がスケッチブックに描いてくれた絵です。)