初出:山陰中央新報いわみ談話室

文房具店で素敵なガラスペンを見つけた。ペン先は透明、持ち手が琥珀色、ワインレッド、オレンジ、グリーン、ブルーの五色のガラスがつながって出来ている。とてもかわいらしいし、ガラスペンを使って絵を描いてみようと思って買い求めた。

 普段、私が使う絵の具の数はかなり少ないと思う。絵の具を混ぜてイメージの色をつくることが好きな私にとって、画材店を経営出来るほど数多くの絵の具があっては楽しみが減って面白くないので、好きな絵の具だけを買ってしまうし、筆も、大、中、小の三本あればいいし、気がつけばおなじみの画材が変わらない量で変わらない位置にある。
だから時々、ガラスペンのような新顔を迎えて試したくなるのだ。結局、ガラスペンは飾りになってしまった。でも見ていると楽しい気持ちになるので、やはり買って良かったと思う。

そんな風に飾りになってしまった画材が他にも数々あるけれど、見ているだけで楽しいもののトップに、ちびた色鉛筆がある。
私がいつも使う色鉛筆は、イーグルカラーといって、小学生が使うそれよりはほんの少し値段が高く、しんが柔らかい。しんが柔らかいので瞬く間にちびてしまう。長さ七センチになった色鉛筆は仕事には使えなくなるけれど、棄てずに机の上に置いている。
七センチの色鉛筆に別れを告げ、布で綺麗に拭いておもちゃのバケツに入れておく。それをどうするかというと、童画展をする時に使うことにしている。会場の端に感想ノートを用意して、その傍に置いておくと、バケツいっぱいの小さな色鉛筆の面々は、父さん母さんに連れてきてもらった子どもの手に間違いなく渡るのだ。
以前、地元の五歳の男の子が、感想ノートに『ぼくのおじいちゃんにもみせてあげたかった』と書いて、その言葉の横におじいちゃんの似顔絵を描いていた。頭に毛が三本のおじいちゃんの絵。笑い転げた。そして嬉しかった。
五歳の男の子のわずか一行の言葉とおじいちゃんの似顔絵。それだけで、男の子がおじいちゃんを大好きだということと、どうやら私の絵を気に入ったらしいと分かる。感想ノートの裏側にまで描いていた女の子もいたっけ。

あれから数年、おもちゃのバケツの中、小さな色鉛筆はさらに増えて子どもの手に渡る日を待っている。
心にエンジンをかけて、せっせと描こうと思う。

2002.7.30