初出:山陰中央新報いわみ談話室

5月の庭。新緑に交じって新入りの花がきれいに咲いている。『今日が母の日だということにしてハナミズキを買ってくれん?』という母の言い方に吹出して、本当の母の日より1ヶ月も前に買ったハナミズキだ。ピンクの花が咲くはずが、咲いてみると白色だった。白のハナミズキも綺麗だから、ま、いいか、と母が笑った。

 そういえば『ま、いいか』がうちでは多いような気がする。完璧をめざさない。適当。がんばらない。
仕事面でも私は完璧主義ではない。それなのに仕事から心が解放されることがないから不思議だ。人生感はアバウト。仕事は真面目。このギャップはすごい。昔、父から『メリハリをつけて上手に遊ぶことも大事。冒険心が足りないよ』と注意されたことがあった。

冒険心か。よし、近いうちにマチュピチュに行こう!と思った。
『私ね、マチュピチュに行こうと思うんよ』と話すと、『え?マチュピチュ?あなたの場合、まずは星高山に登って訓練してからでないと危ないよ』と友が言った。そこは南米アンデスの山の頂きにある世界遺産。標高が高いから体調不良を起こして途中であきらめる人もいるそうだ。『普通の観光地にさえめったに行かない人が、なんでいきなりマチュピチュなん?』とも言われた。意気込みが半分になった。一緒に行こうと約束した友が『とにかく、私たちの足腰が立つうちに行けばいいわよ。やっぱり仕事が気になるんでしょうに?』という。図星だった。

ナンダカンダと理由づけをしながら、好きな江津にへばりついている私にハワイの童話集の絵の依頼が来た。ハワイ在住の日本人女性が原住民のおばあちゃんから口伝えで聞いたお話を長年かけてまとめたというもの。縁あって私がその本の絵を描くことになった。着々と文章の校正が進み、絵が完成するのを待つという段階に来ている。マチュピチュよりも先にハワイかなあ?ウヒヒ〜。でもいつになればそれに取りかかれるのか…。

この前、かわいい小学生から『あっ、ササキメグミさん』と声をかけられた。最近、地元の小中学校生と触れる機会が多いせいだと思う。はにかんだ笑顔で、『ササキメグミさん』とフルネームで呼ばれると、ものすごく照れてこっちがどうしたらいいか分からなくなる。童画を描いているとはいえ、それは自分の心に存在する童心を表現する絵であり、子どもの目を意識して描くわけではない。でも、『ぼく、ササキメグミさんの絵を毎日見とるぅ〜。』なんて言われると世界一幸せな気持になって、心がとろけてしまうのだ。

こう描けば子どもが喜ぶだろうと意識した絵は決して描くまいと思っている。だけど、特に子どもたちの笑顔が私のエネルギー源だということに私はずいぶん前から気づいている。

あの日の輝く笑顔を思いだしながら、絵を待って下さっている方々のこれからの笑顔を想像しながらアトリエに入ることにしよう。笑顔に出会えて安心したら、身体鍛えて?外国でもどこでも行ってきま〜す。
2008年5月