初出:山陰中央新報いわみ談話室

アトリエ周辺に暮らしている猫のチコちゃんたちはこの寒さにくじけず、元気いっぱいに飛び跳ねている。猫はこたつで…ということはなく。
それにひきかえ、私は童画展終了以降、気が抜けた状態が長引いて情けない有様だった。仕事が手につかず、心の中が何だかザワザワしている。何だろう?このザワザワ感は、と心の中を覗いてみても全く分からない。

 そんなモヤモヤを抱えていたある日、友人の智ちゃんから電話があった。
もう二十年以上のおついあいになる。
彼女は、昨年、童画展を見に所沢から来てくれたのだけれど、忙しくて観光案内をしてあげられなかった。
「ごめんね、智ちゃん、どこにも連れて行ってあげられなくてねえ」と言うと「ううん、絵を見られたし、生(なま)メグさんと話せただけで大満足だもの」と彼女は答えた。

「生メグ?」

「そうよ。メールは顔が見えないじゃない。生のメグさんに会って話した方が絶対に楽しいものね。」と彼女。

「最近、気持ちが集中しなくて困ってるんよ」と言うと、「アスパラドリンクⅡを飲んだら?」と思いもかけない言葉が返ってきた。
「なんと言ってもアスパラドリンクⅡよ。メグさんも飲めば元気が出るから」

問題が起きたら、どうすれば良いかと素早く考える彼女の性格は今も変わらずだ。彼女と初めて出会ったとき、彼女はブティックのオーナーだった。ところがバブルがはじけ、経営が立ち行かなくなってお店を閉めてしまった。気を落としているに違いないと思い、閉店した翌日にマンションを訪ねてみたら、「今日、新聞の求人欄を見て面接に行ってきたんだけどね。年齢が…なんて言われて断られたわよ。失礼しちゃうわ!見る目が無いんだから、全く!」と、憤慨している彼女がいた。その求人広告を見てみると、年齢二十五歳まで、と書いてある。
「アハハ、二十五歳くらいには見えるかなと思ったけど、甘かったわ!」
その場で二人して涙を流しながら笑い転げた。その後、彼女はプログラマーの資格を取って就職したけれど、どこの職場でも人に好かれ、必ず主任級になるのだった。確かに、彼女を断った会社の人は見る目が無かった!

つい最近、その智ちゃんから、「ずっと親友でいてくれてありがとう」というメッセージカードが届いた。

私こそ…。
創作分野の人間はめんどくさいもので、これでもかと自分と向き合う習慣を持っていると思う。時に、考えすぎて壁に阻まれた時、徹底して前向きな智ちゃんに何度救われたか分からない。
今回もそうだ。
「アスパラドリンクⅡを飲んで、絵を描かなくちゃ!」と思えた。

私には絵がある。堂々とそう思って生きていきたい。明日は今日より、もっといい絵を。
元気づけてくれたのは、メールではなく友人の「生の声」だった。

2011.2月