初出:山陰中央新報いわみ談話室

嬉しい事があったと友人にメールをした。『嬉しいという言葉、私たちの間では久しぶりだねえ』との返事。
そう言われてみれば、嬉しい事なんて最近めったになかったと気がついた。

 その希なる嬉しい事とは、今年の島根広告賞で、子育て支援パスポート事業『こっころ』のポスターやカード、ステッカーなどが総合部門の銀賞を受賞したこと。それを企画プロデュースした県の少子化対策室の方々、デザインの柏村印刷さん、絵を担当した私と、戴いたご褒美をみんなで喜び合うという素敵な感動を味わった。

『みんな』という言葉がどうも私は好きらしく、数年前制作した童画集も『みんな大好き!』というタイトルだ。
絵に何十人も登場する人物の表情が全部違うね、とよく言われるけれど、同じ人を描く方が私には難しい。みんなそれぞれ違うからこそ面白いし、輝いてくる。一人一人性格を考えて描くと、やんちゃ坊主はやんちゃな姿でちゃんと画面に現れてくれる。動物だって同じく、それぞれが全部違う。だからどうしても画面にあらゆる人や動物をいっぱい描いてしまうのだけれど、描いているうちに、絵にいたずらを仕掛ける癖が私にはある。遊び心と言った方がいいだろうか。
以前に描いた、しかけ絵本『ねむりひめ』にもチョイといたずらをしてしまった。
何をしたかと言えば、『ねむりひめ』に登場する『いじわるな魔女』に情けをかけたのだ。
魔女が十三人いるのに王様は可愛い女の子が生まれたお祝いに十二人の魔女だけを招待して、評判の悪い魔女を一人だけ仲間はずれにしたのだから、そりゃぁ、益々ひねくれて王女にひどい魔法をかけたくなるというもの。『何か他にやり方はなかったの?王様?』と思った。

そこで、自分がかけた強力な魔法が王子の出現で解かれ、百年の眠りから覚めた王女との恋が生まれたのだから、ここはひとつ心を入れ替えて二人を祝福してあげようと、結婚式に出席しているいじわるな魔女を描き足してしまった。思わず感激の涙を流している姿で。
それから二年が過ぎたある日、訪れた福波小学校でその絵本の紹介をしていたら、一人の生徒が『どうしていじわるな魔女が結婚式に出ているんですか』と質問したのでビックリ!
わけを説明すると、そうかぁ!と言って笑ってくれたのでホッとしたけれど、そっと小さく描いたその魔女に『気がついてくれた』ということが何よりも嬉しかった。
絵を見ていろいろ発見してね、考えてみてねという私のささやかな願いとしてのいたずらでもあったから。

横断歩道で信号が青になってから急ぎ足で渡っている猫を二回も見かけた。これはすごい学習能力!
みんな地球に生きている。愛おしいと思う。それぞれがその個性を輝かせ、認め合いながら、みんなで生きていけたらどんなに素晴らしいだろう。
そう考えながら今夜も私は絵にそっといたずらを仕掛けた。
2007.2.28