初出:山陰中央新報いわみ談話室

 私の新年はいつも通りに始まった。1月1日〇時過ぎから仕事を始めた。母のお陰で、季節の行事は欠かすことなく、クリスマスもお正月もそれなりのことをするけれど、仕事はマイペース。お正月だろうと普通に仕事をする。お酒も飲めず、レジャーにも余り興味がないけれど、別に悲しいとは思わず暮らしている。その夜は元日なので、バラのお香を焚き、音楽は威勢よくロックを流そうと決めた。私の仕事始めの「形」だった。

 昨年、高校生から「佐々木さんは集中したい時、何か工夫をしていますか?」と聞かれたので「仕事をするための形を作ります」と答えた。「形」は大事。「形」=「やる気の演出」だと思うから。
そういえば、昨年珍しく我を忘れて集中出来た日があった。それは島根県高文連による詩や小説の入選作が載っている冊子を読んだ時だ。機会あって手にしたその冊子。一気に最後まで読まずにはいられないほど素晴らしい作品が揃っていた。これ、本当に高校生の作品なの?と何度も思った。自分の内面の奥の奥まで見つめて、洗練された無駄の無い言葉で、正直に表現している。一口に、とことん自分と向き合うと言ったって、それは勇気とエネルギーが要ることだ。なるほど最近は芥川賞を高校を出てまもない10代の作家が受賞することもあるわけだわ、と思った。もしかしたら島根県から若手作家が続々とデビューするかもしれない。ガンバレ!高校生!と声援を送っているうちに、知らず知らず刺激を受けていたのだろう。普通なら2日間はかかる仕事を一気にひと晩で仕上げた。時には「形」が必要ない時もある。脳の中の「やる気」の仕組みはどうなっているのかなあ?

昨年の暮れ、江津市子育てサポートセンター主催の「母と子のクリスマスコンサート」に、大型スクリーンによる絵本の読み聞かせで参加させていただいた。当日は魔法使いのような格好をして行った。ここでも「形」だ。私は「形」から一歩進むのだ。出演は江の川高校吹奏楽部。見事な演奏だった。保育士さんたちのダンスパフォーマンスも、子育て中の主婦の方々による演奏も素敵だった。そして高校生がボランティアでコンサートのお手伝い。地域で子育てを盛り上げようという光景に胸が熱くなった。さらにサポートセンターのスタッフの方々が汗をかきながら一生懸命にかけずり回っておられる姿に心から感動した一日だった。
もう1月も終わろうとしているけれど、今年頂いた年賀状の多くに「こんな暗い世の中だからこそ思いきり楽しい絵を見せてね」という言葉が書いてあった。でも、励まされているのは私の方だ。人の笑顔と情熱の汗を見た時、わざわざ「形」を作らなくても「ワタシモガンバリマス」の力が出るみたいだから。
2009.1月