初出:山陰中央新報いわみ談話室

 今年も池にピンクと黄色のスイレンがいっぱい咲いた。アトリエ前の夏ミカンの花が香水のようなさわやかな匂(にお)いを放った後は、ヤマボウシやアジサイが咲き始めた。周辺の眺めはいつも通りだけれど、最近の私の生活はいつも通りではなかった。

 保育所の参観日にお母さん方の前でお話を、という依頼が連続して来たのだ。子育てをしていない私が何を?と躊躇(ちゅうちょ)していると、依頼主の一人であるケメさん(跡市保育所で保育士をしている友人)が「ちょうど少子化対策のメグさんの絵のポスターが飾られているし、時期としてはいいはずだわね? 絵の話でいいんだから」と上手な言い方をするので、気がつけば、「行きます」と返事をしていた。

で、何を話したかと言うと、絵を通して出会った人々から学んだことや感動したこと。人との競争となると負けてばかりの私にとって勝ち負けではなく自分らしい表現をすることが良しとされるこの世界が気性に合ったこと。子どものころ、絵が上手だねと褒められ、うれしかった記憶が絵描きになるきっかけになったので、子どものいいところを本気で褒めてあげてほしいということ。故郷で人と出会い、かかわりながら絵を描いていることに幸せを感じていることなどを話した。緊張で足がつって、けいれんしていることを隠しながら。
すると、一人の女性が泣き出したのだ。松江から来られたのだという。私はビックリした拍子にもらい泣きをして、見ればケメさんや所長先生の目も赤い。話を聞いて心の中でくすぶっていたものがスッキリしたと言ってくださった。何だか急に私の緊張も解けて、若いお母さんたちと近づけた気がした。
話が終わった後は、園児たちに交じっておいしい昼食をごちそうになった。ただし、難関あり。子どもに本当の味を知ってもらうため、野菜サラダにドレッシングはかけないということ。苦手だなぁと思っていたら、ケメさんから怒られたので全部食べて、後から「メグさん、エラかったねぇ」と褒められた。いくつになっても褒められるとうれしいのだった。
数日後、跡市のホタル祭りに誘っていただいた。浴衣姿の子どもたちと一緒に石見神楽や阿刀ノ庄太鼓の演奏を聞いたり、懐かしきホタルを見られたのは本当に楽しかった。

子ども受難の世の中、地域の結束があらためて求められている。阿刀ノ庄太鼓はそもそも園児のお父さんたちが子どもたちを喜ばせたい一心でグループを結成して、それから二十年続いているのだと聞いた。
県の子育て応援パスポート事業(愛称こっころ)が七月からスタートするけれど、協賛店の第一次申し込みが目標を上回ったそうだ。
サービスする側は、大変かもしれないけれど、どうしたら喜んでもらえるかと作戦を考えることはひょっとして楽しいことかもしれない。阿刀ノ庄太鼓の優しいお父さんたちのように。
人前で話すことはやはり苦手だけれど、楽しいひと時と出会いをプレゼントしてもらって、またひとつ私の宝物が増えた。
2006.6.28