初出:山陰中央新報いわみ談話室

 半分野良猫のモモちゃんと3匹の子猫のその後。
モモ母さんは、秘密基地から子猫を降ろして「私の子どもで〜す。よろしく」と言ってやって来た。アトリエ横のいつもの場所で子育てをしている。

以前、児童から「どうしたら個性的な絵が描けますか?」と質問されたことがある。難しい質問だった。あのときどう答えたのだろう。今考えてみて、自分の個性というのはふとしたときに気がつくものなのかもしれない。自分が何を描きたいのか。それを表現するためには、紙に描くことが良いのか、キャンパスなのか。手法はたくさんあるけれど、好きな手法が見つからなければ、今までに無い手法を考えだすこともいい。絵の具は水彩?それとも油絵の具?「私はこれが好き」と思うものをこと細かく探していくうちに自然に「自分らしい絵」が仕上がり、それが「個性」になるのではないかと思う。
絵という表現でなくても、いつか「自分らしさ」が分かり、自分を好きになれば、人と違っていても、コンプレックスを感じることはないと思う。

熊谷守一は孤高の画家として知られている。赤貧から三人の子供を亡くし、その自責の念は一生続いたという。60歳を過ぎた頃からは自宅から一歩も出ず、庭の草花や小さな虫を観察してそれを絵に描いた。「蟻は左のニ番目の足から歩き始めるんです」 これは熊谷守一、96歳の言葉。アリがどの足から歩き始めるのか、肉眼で確かめるためには「小さな命」への飛び抜けた尊敬心と愛情が無くては無理だと思う。壮絶にも思える画家人生。でも、虫と対面している老画家の心に絶えること無い新鮮な驚きと極上の幸福感が溢れているのが私には見える。何が不幸で何が幸福か、その感じ方もそれぞれ。

神様が「君にひとつだけ特殊能力を与えよう」と私に言ってくれたら、迷わず「動物語がわかるようにしてください」とお願いする。楽しいだろうな。あっちから見てこっちはどんなふうに映っているのやら。まずは、ミツバチに「ミツを集めに出かけるハチは、ハチの中でも花形だと聞きましたが本当ですか?」と尋ねてみたい。こういう願いを真剣に考える人間もここにこうしているのです。

2011年8月4日