初出:山陰中央新報いわみ談話室

10月16日から桜江町の今井美術館で童画展が始まる。

絵の額装がまだ終わっていない。でもそろりそろりと準備をしている。
数年前の童画展の時、一気に重い額縁を二階から降ろしたせいか、初日早々、歯が痛んでほっぺたが腫れるし、そのうえジンマシンが出て最悪だった。
普段は元気がいいくせに、ここぞという大事なとき、万全な体調で臨んだことがないものだから、「そろりそろりと行かなきゃ」と自分に言い聞かせている。

個展は体調を崩すほど緊張する大切なイベント。
でも、今回は楽しみな気持が上回っている。

9月1日に「さくらえのみんわ」が発刊され、その原画を主体に並べる。
地元の工芸社にお願いしてかわいいディスプレイを作ってもらっているので、特に子どもたちに喜んでもらえそうだ。

猛暑から一気に薄ら寒い秋に。それでも額に汗がにじむ。額縁に絵を入れる作業は、ゴミひと粒もガラスに付けてはならないので大変だ。
でも、深夜に、この作業の音だけ部屋に響く孤独な作業が結構心地いい。

先日、あるお店で買物をしていたら、制服姿のかわいい女の子が私を見て「あっ」と言った。すぐに私はその女の子が高角小学校の児童だと思った。
地元、高角小学校の玄関には私の絵が飾ってあり、時たま児童たちと交流が
あるので、すれちがいざまに「あっ」と言うのはたいがい高角小学校の
児童たちだから。

「高角小学校でしょう?」と聞くとその子は「はい」と答え、続けて
「あのね、さくらえのみんわ、読みました」と言うのだ。
「え〜?出版されたばかりなのに、もう読んでくれたの?」と言うと
「はい、おばあちゃんが買ってきてくれたんで。
それでね、私、お噺山とお寺(甘南備寺)に行ってみたいです」。

絵本を読んでそのお話のモデルになった場所へ行ってみたいと思ってくれた
女の子がいる。それだけで絵本を創ってよかったと思った。
子どものそんな感想が何よりものご褒美だから。

孤独な作業が心地いいと言ったけれど、絵を描き終わったところで孤独とは
お別れ。本が出来れば、本が様々な人との出会いを運んでくれる。
努力の先には必ずひと時の幸せが待っていると信じて絵と向きあうのだけれど、その幸せのひとつが「出会い」である。

今度の童画展では、地元の方々の技術もじっくりと見ていただければと思う。本の印刷、デザイン(柏村印刷)にも、会場のディスプレイ(住田工芸)にも「より良いものを」という真摯な心が見てもらえると思う。

「メグさんの地元っていいねえ。地方だからと言ってあなどれないね」と言われた。そりゃあそうです。あなどってもらっちゃあ困ります。都会以上の仕事を致します、と看板を掲げたいくらい。とまたお国自慢をしそうなので、このへんで。
(10月7日山陰中央新報 いわみ談話室)