ギリギリ間に合った!
お正月からの仕事は、講談社の幼児雑誌『おともだち』の中の世界名作童話『ジャックと豆の木』の挿絵だった。
私は仕事が遅いから、期限がある仕事はいつもギリギリになってしまう。

それにしても、『ジャックと豆の木』の挿絵依頼は出版社こそ違うけれど、これで2度目だ。依頼されて何故?と思うのはおかしいけれど、ジャックと豆の木の物語のどういう場面が私の絵をイメージさせるのだろうか。不思議。

ここに登場する『人食いの大男』だけど、ある日突然やってきた男の子に宝物を奪われ、あげくに空から落ちて粉々になるわけでしょ。ジャックとお母さんは奪った宝物で幸せに暮らしました、めでたしめでたし、というのは、何だかすっきりしないと思って。そんなわけで、とてもお洒落な人食い大男で、どこか人の良さそうな大男に描いてしまった。いかがでしょうか?

前に『はじめてのめいさくしかけえほん』シリーズの『ねむりひめ』を描いたけれど、ここに登場する『いじわるな魔女』にも情けを?かけてしまった。
13人の魔女がいるのに王様は可愛い女の子が生まれたお祝いに12人の魔女だけを招待して、評判の悪いその魔女を仲間はずれにしたのだから、(物語によっては、おばあさんだからという理由で、というのもある)そりゃぁ、益々ひねくれるというもの。愛娘にひどいことをされては大変という王様の気持ちはわかるけど、誰だってひとりだけ仲間はずれにされたら気分悪いよね、と思った。

そこで、ねむりひめの魔法が無事に解けて、素敵な王子様との結婚式というその場面に、いじわるな魔女をそっと小さく登場させたのだった。
自分がかけた強力な魔法にも負けず、愛しあう二人がめでたく結ばれたのだから、ここはひとつ心を入れ替えて2人の結婚を喜んであげようと思って、感激の涙を流しながら出席しているという設定にしてしまった。もちろん、そうっと。誰にもわからないだろうなという私の遊び心。いえ、いたずら心かな。

ところが、去年訪れた福波小学校の生徒から、ねむりひめの絵本を紹介した時に、『あの、どうして悪い魔女が結婚式に出ているんですか?』と質問があって、びっくり、どっきり!やっぱり子どもにはバレる〜!
でも、これこれしかじかでと説明すると、なるほど!とニコッと笑ってくれたのでホッとしたけれど、それよりも、まずは気がつかないだろうと思うほどに小さく描いたその魔女に『気がついてくれた』ということが何よりもの私の喜びだった。

何事も解釈はひと通りではないし、特に子どもたちには、目の前にあるものを自分の目で、自分の心でしっかりと見つめて、発見して、考えて、大きくなってね、と、これは私からのささやかなメッセージのつもり。まだまだあります、私の遊び心。どうぞ見つけて下さい。