恒例。クリスマスが近くなると私はアトリエのテーブルの上に、ささやかなあかりを灯す。
普段からキャンドルのあかりで気分転換をはかることがあるけれど、今年はプレゼントしてもらった可愛いクリスマスグッズが加わり、さらに楽しくなったし、温かなメッセージが書いてあるカードももらって涙がこぼれそうになった。にも拘らず、どうも今夜の私はため息ばかり。
たいして前向きな人間でもないし、かといって過去を振り返るタイプでもない
けれど、ふとした瞬間に去年の今頃は父もテツもいたのだと思うと、つい、しみじみしてしまう。

が、母の明るさには大いに救われている。
父を追うようにテツがいなくなり、母もしばらく憔悴していたが、次第に世話の矛先を私に向けてきた。気持ちを切り替えるための創意工夫はなかなかのもの。
『今日の予定は?』『今夜は仕事をするの?』などなど、マネージャーかい?と言いたくなるほどの世話っぶり。お客さんが来られる時は、何人?などと聞いて、はりきってコーヒーを入れてくれるのだ。ついでに母は来年の目標までかかげた。庭の敷石を直すそうだ。これについてはモメた。第一お金がかかる。どうして今のままで不満なの?と。すると一生懸命に私を説得にかかる。最後にはおかしくなって吹出してしまうのだ。父は母が突然何かを思いつくたびに『あいつには困るのぉ』とぼやいていたけれど、最後は折れていた父の気持ちがよ〜くわかった。目をぱちぱちさせながら必死に説き伏せようとする姿は我が母親ながら可愛いのだった。

考えれば『守り』の人生に入ってもおかしくない年齢の母だ。来年は目標をかかげて頑張ろうというのだからエライかも。ターシャ・テューダー(90歳。絵本作家。その暮らし方、そして庭作りが素晴らしいことで有名)の番組がまたあるんよと喜んでもいたし。
でも私はちゃんと気がついている。母は今、目標でも持たなければとてもじゃないけれど淋しくてやりきれないのだ。

母が目標をかかげたとなれば、私の目標は?
なんちゃって、目の前にある仕事をひとつひとつ一生懸命にやる。実はこれしかないのだ。

ここは私のアトリエ。仕事場である。だから愛するテツでさえめったにここには連れてこなかった。たまにこうしてあかりを楽しむ時はテツを連れてきた。まるでお客様のようにかしこまるテツ。『ほら、きれいでしょ』と言うと、大きな目を細めた。もっともっと一緒にいてやればよかった、と思う。一方で、絵を描かない時間は思いきり抱きしめていたはずと自分を慰める。

強がってみたけれど、まだしばらくはやっぱり辛いね、テツ。
さてさて、涙をふいて仕事に戻りましょう。母に負けていられないのだわ。