冬枯れの庭に小さいけれど色とりどりの花が咲いていた。『この寒いのによく咲いているねえ〜』と花に声をかけて足早にアトリエに戻った。寒い寒い!
例年の岡田君のシクラメンが鮮やかな色を放っていた。早朝6時。

『佐々木さんは一体いつ寝ているのですか?』

今、一緒に仕事をしているFさんから度々この質問があるのだけれど、返信時間が午前5時頃に表示してあれば誰だってビックリ。時差のある深夜生活を来年こそは改善したいと思ってはいるけれど。実際、メールが発明されて助かっているなあと思う。
Fさんからの仕事の連絡は短く分かりやすくまとめられている。が、『話はそれますが』という言葉のあとのお話がとても魅力的な方で、そのFさんが来年早々には童画展に来て下さる。続けて所沢の智ちゃんが来てくれる。さてどうやっておもてなしをしようか。智ちゃんにいたっては何度も来ているのに『観光』をしていない。会えるだけで楽しいから、な〜んて言ってくれているんだけど。とにかく楽しみのために、今のうちに仕事を片付けておこうと必死だ。

今夜はCDを聴いている。服部良一の曲を息子の服部克久さんらがアレンジ。それを福山雅治、井上陽水、佐藤しのぶ、小田和正、徳永英明、松浦亜弥などが歌っているけれど、その歌詞の美しさに気をとられて仕事にならない。あの時代の日本語はなんて綺麗なんだろう。蘇州夜曲の歌詞。『涙ぐむようなおぼろの月に〜』だもの。涙ぐむようなおぼろの月。同じ人間なのにどうしてこんな詩を書けるんだろう。すごいな…。

こうして音楽を聴くのも久しぶり。ホント〜に忙しかった。

16日の日曜日。今井美術館。
今日はもうお客さんは来ないだろうねえと話していた。本当なら今井美術館は休館日の日だし、とても寒い日だったから。紅茶でも飲もうかと話していたら3人のお客様が入って来られた。50代くらいの女性が2人。もう1人は年配の方だった。1人の女性に見覚えがあった。昨年、アトリエに来られた方だった。その時は別の女性と一緒だったけれど、その伴って来られた女性は私の絵が好きで、実は重い病気が進行していて早く彼女の夢を叶えてあげたいと思い、一緒に来られたということだった。その時そんな気配を私はみじんも感じなかった。2時間くらい絵の話をして楽しく過ごしたのだから。その人は今年亡くなられたと…。そばにいた年配の方は亡くなられた方のお母さんだと紹介された。
お母さんは背中を丸め、じっと絵を見つめている。
『娘が好きだったあなたの絵を見たいと思って、連れて来てもらいました』とおっしゃった。
絵を見てどう感じられたかは分からない。何も聞くことが出来なかったから。
階下で童画集を手に取られたので私は思わず『童画集はお母さんにプレゼントさせて下さい』と言った。するとそれを抱きしめて何度も『ありがとう』と言って涙ぐまれた。
あの時の私の気持をどう表現すればいいか分からない。
ぼう然とした…。
あれから一週間経った。
今、絵を描いてきて良かったと静かに思っている。
絵を描いてきてよかったと。