印刷会社のデザイナーの人、その息子さん、水族館勤務の人、喫茶店のマスター、職業は聞かなかったけれどデザイナーさんのお友達。総勢5人の男子はみんなギターを弾き、たまにはお客さんの前で演奏している面々なのだけれど、彼らみんな、ギタリスト押尾コータローのファン。そして私も、ファン。

雲南までは、川本町から頓原に抜ける道を走った。いい道路がついているとはいえ、すごい山の中。

美しい紅葉街道を通り、頓原でおいしいおそばを食べて、それから、車中で『この辺は蔵のある家が多いのねぇ』とか『茅葺屋根がいっぱいだね〜』とか言いながら、里山ののどかな風景を眺めていたら、突然、洒落たデザインの白い建物が出現して驚いた。その建物がラメールという雲南市加茂文化ホールだった。
雪が降りそうな寒い日、開演までロビーで待っているのは辛かったけれど、ご自由にどうぞと身体の芯がぬくもる熱いお茶がテーブルに用意されていて嬉しかった。そばにいる5人のギタリストたちは、お茶もそこそこに、まるで少年のように目を輝かせている。

『あの、コータローの生演奏を聴けるんだよね、夢みたいだな。』

5人がドキドキしている様子が伝わってきた。講釈を言う者はひとりもいない。ひたすら少年の心なのだ。私までドキドキしてきた。
いよいよ開演。会場はスモックが炊かれていて、そこにフワッとした薄いピンク色の光が会場全体を包む。その光の中からスッとコータローが登場してきた。185センチの身長というだけあって、立ち姿が綺麗だわぁなんてミーハーの私がつぶやく。
彼の音色は本当に独特で魅力的だった。アンコールの後の演奏が長く続いたのでそのまま朝になるかと思った。心に響くとてもいいコンサートだった。

音楽家であれ、画家であれ、その人の素晴らしい表現と出会うと、自分の存在がひどく小さく感じられて、瞬間落ち込むのが正直なところだけれど、私も世間の隅っこで絵を描いて、表現者として暮らしていることの幸せも一方で感じるのだ。帰りの車中、みんなはどんなことを考えていたんだろう?

この辺りは紅葉が遅かったけれど、今やっと紅葉真っ盛りとなっている。祖父が50年前に植えたイチョウの木が今年も見事に黄色くなった。
イチョウを見て、あの日の紅葉街道とギター弾き達の高揚した顔を思い出している。いい一日だった。