今、2008年のカレンダーの絵の仕上げ、真っただ中。
6枚のうち自信のあるスケッチから仕上げていけば、気分良く次に進めることは分かっていても、どうして私は一番難しいものから手をつけるのかなあ?描いても描いても納得出来ず、心に引かかりがあると、一歩も前に進めない。予定よりずいぶん遅れてしまった。今は3点目。予想外に苦労している。

4時間も絵を描いていると、めがねをかけていても焦点が合わなくなってくるので、目薬をさし、目をマッサージする。残念ながらさほど効果無し。これが年をとるということなのねえ、と哀しくなるけれど、よ〜く考えたら、他のことをしている時は元気なのだった!

少し休もうと読みかけの本を読んだり、パソコンに向かったり、同じ目を使うことなのに、『ああ、楽ちん!』と思う。

アトリエでは、音楽をかける時とかけない時がある。本当に描くことに集中したい時は、というより余裕がない時は音楽さえ煩わしく思うことが多い。聞こえてくる音はカエルの鳴き声だけ。

ふと、そうだ、今夜はあれを聞いてみようと一枚のCDを手に取った。従姉妹にあたる弘美姉さんが、先日『感動したシャンソン歌手のCDです』と言って送ってくれたものだ。弘美姉さんの職業はフリーライターで、16年前から奥多摩で美しい自然に囲まれて暮らしている。パソコンなど目もくれずという生活だったけれど、最近観念してやっとパソコンを使い始めた。早朝に夫のお弁当を作り、そのあと自身の仕事をするという生活だから、お互いにめったに連絡を取らなかったけれど、弘美姉さんがメールを始めたことで、深夜便を楽しんでいる。弘美姉さんも私も長いこと『パソコンなんて興味ないよねえ』という否定組だったのに『やっぱりメールって便利だよね』なんて言いあうことになるのだから、人の心は変化するものなのだ。へへへ…。

可愛い包装紙に包んであるそれを手に取る。槙 小奈帆(まきさなほ)…、知らないなあと思いながらまずは聞いてみた。心をわしづかみにされるとはこのことだ。曲は『入り江にて』。
低音のハスキーボイス。せつない声というか、どんな人生でも受け入れてやるわよという強さを秘めた声というか、包容力のある声というか、歌詞よりもメロディーよりも、その声に強烈に魅かれた。
何回も何回も聞いてやっと歌詞が耳に入ってきた。

♪眠っていたこの心の 扉を開けたのはあなた
あなたがいれば生きていけると…

愛しすぎた 永遠を信じた そんな私をあなたは恐れた
優しい言葉であたしを避ける それがあなたのさよなら♪

何度も聞きながらついに涙が込み上げてきた。

『めぐちゃんが気に入ってくれて良かったわ』とメールが来た。
私はお礼に朝の光に照らされた小花の写真をメールで送った。『はっとするほど綺麗な写真。こんな朝の光をしばらく見ていなかった』と返信が来た。カエルの声を友にひっそりと暮らしている私に優しく話しかけてくれる『お姉さん』がいてよかった。メール、本当に悪くないさ。