毎年11月になると早々と今年93歳になられるイギリスのディー先生から年賀状が届く。
かれこれ24年前に、私が銀座で初個展をしたときに、優しそうな外国の人がニコニコして入ってこられ、私の絵を見て懸命に何やら話かけてきたけれど、英語が苦手な私は、適当に相づちをうっていた。誉めてくださったんだろうなぁとは思っていた。個展の最終日、その人が今度は日本人の女性を連れてやって来た。通訳の役目を仰せつかったらしい。

ヨーロッパのナイーブアートの画集や、絵はがき、それも私の絵に参考になりそうなものばかりを送ってくださるディー先生に、 私は、下手な英語での礼状の代わりに、カレンダーの仕事をすればそのカレンダーを、絵本を出せばその絵本を送った。その度に便せん3枚4枚に渡ってその絵の感想を書いて返事を下さるのだった。

 どうしてそんなに応援してくださるのかという質問をしたことがある。すると『自分の目で見て、好きだと感じた絵を描く人を応援するのは人間として当たり前だ』という返事。有名無名は関係なく、絵は自分自身の感性で見るものだと。
今、ディー先生はデボンという、調度この石見地方のように山のすぐ近くに港町がある素敵な町で娘さんと暮らしておられる。
その娘さんは小児科のお医者さんで、私が送ったカレンダーの絵を切り取って病院の壁にズラリと飾って下さっているとか。14年分のカレンダー、一枚残らず…。

人からのそんな言葉でどれだけ励まされて描いてきたことか。
早過ぎる年賀状が、絶対に出し忘れないようにというディー先生の思いなのか、イギリスの習慣なのかよくわからないけれど、毎年ユニセフの絵はがきを使った年賀状が11月早々に届くたびに、あぁ、お元気なんだとホット胸をなで下ろしている。
私もいつか、ディー先生のように、人の心を強くする言葉を人に言えるようにになりたいと思うけれど、いつまでたっても自分のことで精一杯な生き方をしていて恥ずかしい。

早速絵はがきをアトリエの棚に飾った。
それは優しさであふれている。