ディナーショーを見に行くなんてことは滅多にない。ずいぶん昔、親友の智ちゃんと高橋真利子のディナーショーに行った。二人で精一杯のお洒落をして出かけたものの突然の大雨に見舞われ、智ちゃんはローンで買ったシルバーフォックスの毛皮を脱ぎ、腕の中に丸めて抱えた。

大雨の中、二人で横断歩道を全速力で走ってずぶぬれになって会場に着いたことが昨日のことのよう。それから10年以上経って、今回は広島での松田聖子のディナーショーに行くことになった。江津市桜江町にある今井美術館館長の今井さんが誘ってくださったのだ。何故松田聖子になったかという経過は話すと長くなるので省くことにする。
さて、今度は雪に見舞われた。その雪にも負けず、無事に広島に着き、寒さにもくじけずドレスアップして夜を待った。実は、女性はこれが楽しいのだ。非日常が。
ホテルロビーに行くと、波のように押し寄せる人、人。
髪を綺麗に結って着物を粋に着こなした絶世の美女のクラブのママ。ウサギさんの帽子に白のふわふわドレスの女の子。クルクルに髪をカールした聖子ちゃん風女性たち。朱赤が美しく輝くチマチョゴリを着た女性二人。そしていかにもセレブといったきらびやかなマダムたち。
山陰の山の中のアトリエで絵ばっかり描いている私にとっては別世界もいいところだ。数多くの席を経験されている今井さんでさえ目を白黒だから相当なもの。いよいよ松田聖子のショーが始まる。歌よりも『こんばんわ。松田聖子です』としゃべる声を聞いた時にやっと、あぁ、松田聖子だ!と思ったのが不思議だった。正直なところ松田聖子の輝きがあまり心に届かなかったような気がする。観客のインパクトが強すぎたのかな。演歌歌手が何故、あそこまでピカピカの衣装を着るのか、とても不思議だったけれど、わけがよ〜く解った。少々のことでは目立たないってことだ。
でも、これだから人って面白い。前に恩師が『人は非日常をたまには体験すべき』とおっしゃっていたけれど、非日常は確かに新たな想像をかき立てるものらしい。
それにしても、今井さんの心の柔らかさにはいつも驚かされている。能でも歌舞伎でもクラシックでも松田聖子でも、みずみずしい好奇心を発揮され、一日でも余裕があればひらりと軽やかにそこに足を運ばれる。そして必ず何かを吸収してこられる。あんな風に生きられたらなぁと思う。
が、今日も私は仕事に支配され、とても軽やかに生きているとは言えない一日を過ごした。でも、いいことがあった。絵の中の登場人物にあの日の個性派たちが増えていた。ウレシ〜ィ!