6月24日、いよいよ、新済生会病院に絵『春のおはなし』を搬入した。
済生会まで近いので、いつでも絵を見られるけれど、それでも絵とのお別れ。
長い間アトリエにあった絵が無くなるというのはやはり淋しいことなのだ。こういうところがプロらしからぬ、私の甘いところかも。

『おぉ、きれいな絵が出来ましたねぇ、こりゃあ、いい!』と第一声。お世辞は言わない方なので、それを聞いて一安心。本当にいいですか?本当に?と何度も聞き返したくなるほど、実はそんなに自信満々で生きていないから、田辺さんの目を何度も覗き込んだ。

肝心な依頼主の院長先生は出張中で不在だったけれど、搬入と聞いて、他の医師の先生や事務長さん、部長さんが来て下さった。
一階外来の小児科と内科のブロック。100号の絵が入ると見越してあったような形で、絵をつり下げられるように丈夫な金具は取り付けてあるし、柔らかい照明がちょうど当たるようになっていた。みんなが見守る中、田辺さんと奥さんが汗だくだくで、絵が落ちて誰かが怪我をするようなことが決して起こらないように、頑丈な取り付けをして下さり、いよいよ白の額縁に入った絵が正面を向いた。

『うわぁ〜、これは楽しいね!』
そこにいた人たちがそう言って下さったので、ほっとした。
子どもの目線にあわせて少し低めにつり下げてもらった。6月にオープンしたら
みんながどんな風に見てくれるだろうか。子どもたちはまず登場人物の人数を数えるに違いないけど。

『絵が仕上がったらお父さんに絵を見てもらわなきゃね』と前に院長先生がおっしゃっていたのを思い出した。
二階にはリハビリの部屋があり、素敵な中庭が患者さんのために設置してある。
急に父の不在を感じる。
帰ってから母の顔を見たとたんに、不覚にも涙が出てしまった。
『お父さんに見てもらいたかったわ』

夏みかんの木に花が咲き始めた。あわてて夏みかんを収穫する。
うちの夏みかんはおいしいのだ。
うちに来た人への手みやげに出来るように母がオイコに入れてアトリエ前に置いてくれている。そう言えば父が大好きだったな、夏みかん。
いつものように、みつばちが夏みかんの花の蜜を吸いにやってきている。
私もいつものように、また絵を描かなきゃ。そうそう、いつものように。