母が『あなたはどこへも行けないで可愛そう』と言う。そりゃぁ、北は北海道から南は沖縄、アメリカにハワイまで父と一緒に数々旅行をした母にくらべたら、私は何処にも行っていないに等しい。大体は仕事に支配されてしまう性格だし。でも、毎朝見るアトリエ周辺の景色を見れば疲れもストレスも飛んでいくみたいだ。考えたらそもそも、ストレスが少ないかなぁ、私。もちろん大変だなぁと思うことはあるけれど、好きな仕事をしているわけだし。

アトリエ前に木いちごの実が一杯ついたので、口に放り込みながら、しばらく庭を歩く。植えた覚えのない花が咲いていたり、ヘビに出くわしたり、カエルが横切ったりそれなりにバリエーション豊かな朝を過ごしている。

そんなおり、友人のケメさんから、(彼女は跡市保育園で保母さんをしているのだけど)参観日にお母さんたちにお話をして欲しいと依頼された。何で?子育てしていない私が何を話すん?とためらっていると、『メグさんの子育て応援パスポートのポスターも保育園にかかっているし、絵の話がいいのよ、それでいいんだから』とケメさんの話術に引っ掛かって?引き受けてしまった。
で、お母さん方を前に、なんやかんやとお話したのだけど、ある女性が『佐々木さんと会えて嬉しい』と言って泣き出したのだった。松江から来られたという。
ビックリして思わずもらい泣きをした。ケメさんも泣いていた。私のどの話が彼女の心に響いたのか、今もって分からないけれど、心の中の重いものが取れたのだそうだ。膝ががくがくするほど緊張していた私だけれど、急に若いお母さんたちに近づけた気がした。
そして数日後、跡市でのホタル祭りにも参加することになった。何だか一人で行くのはまだ恥ずかしかったので友達も一緒に参加してもらった。
会場は跡市小学校。ここがまた木造の素敵な校舎で、いずれ絵に描こうと思った。
子ども石見神楽が驚くほど素晴らしかった。そのあとは和太鼓の演奏。跡市保育園園児のお父さんたちが、子どもを喜ばせようと結成した和太鼓演奏グループで、もう20年続いているそうだ。すごくいい話だなぁと思った。
そのあとは、みんな外に出て、幻想的とも思えるたくさんのホタルを見た。

帰りは、穴場を良く知っている友達が、川沿いを運転して帰ってくれた。
跡市から有福。有福から江津へのルート。そこかしこでホタルが光る。

故郷を改めて誇りに思った一夜だった。